ここ数年で、私が好きだった2つのホテルの運営主体が変わりました。一つは外資オペ→日系オペ、もう一つは、日系オペ→外資オペ。立地は同じ、大きな改装は無かったので、変わったのは運営主体だけです。それぞれに、素敵なスパ施設を持つホテルなので、激務だった頃、よくお世話になっていました。
運営が変わった後、お食事会の会場になっていたので、ウキウキしながら出かけました。が、エントランスから何かが違う。中に入るともっと違う、イベント会場の設営も、出されたお食事も、以前のものとはまるで異なるものになっていて、もうがっくりしました。
玄関部分には、ゴミや枯葉が散らばっていて、ベルもいません。晴れた日でしたけど、傘立てが何基も置かれていて、しかも汚い。ロビーの家具は、木の塗装が剥がれてメンテもなされておらず、ファブリックもバラバラ。しかも張り替えたファブリックがとっても安っぽい。生花がたっぷりと飾ってあった花台は造花に代わっていました。何より気になったのは、大理石です。このホテルの内装には、上質な大理石がふんだんに使われていました。大理石は呼吸する石なので、埃を吸ってしまうと、濁っていきます。いつも掃除して、大理石を磨き上げることが必要になります。つやつやだった大理石が、どんより濁っていました。
あのホテルがこうなるんだ・・。と愕然としました。ホテルやスパに関わる人間として、本来はどうあるべきか、まとめてみました。
1.徹底した清掃(枯葉が落ち続けても拾う)2.余計なものを置かない 3.家具や絨毯などはこまめにメンテナンスし、シミやへたりを感じさせない 4.飾るなら生花、造花を飾るぐらいなら置かない 5.大理石や木などの天然素材は専門のメンテを行う 6.看板・POPは最低限。置くなら整然と 7.テプラ厳禁 8.タオル、グラスなどの消耗品は必要数を美しく置く 9.汚れたものはすぐに片付ける 10.雑誌は新しいもののみ。へりが曲がったら置かない
家庭においてすら、当たり前のこと満載です。でも、これが出来ていない”高級”ホテルが存在するということです。興味深いのは、客層も大きく変わっていた点です。もしかすると、多少汚れていても造花でも気にしない顧客層に変化したため、質を保つために費用や人手をかける必要を感じていないのかもしれません。
変化はスパでも同様だったのですが、こちらでは問題が起きていました。トリートメントを受けた後、ロッカールームに戻ってみると、マダムたちの会議の真っ最中でした。長年通っておられる方々だったようです。口々に不満を口にされたのですが、結論は、”会員をやめる”だったようです。近隣の住民で、高額な会費を支払っておられる、”超優良顧客”です。スパ会員の方は、宿泊や宴会でのご利用が多いのが常ですが、この方々も同様だったようで、それも他のホテルに切り替えるべく、情報交換をしておられました。
この会話を聞いていて、大昔のことを思い出していました。まだ若かりし頃、この同じロッカーは何とも言えないいい雰囲気に包まれていました。会員のマダムたちは、いかにここが素敵なホテルでスパであるか、嬉しそうに話しておられました。”ここに来ると気持ちが和む、優しくなれる”という会話を耳にし、一時期私も会員になったことがあります。素敵な運営は、素敵な顧客を呼びます。そして、逆のことも起き得るということです。
スパ運営の仕事を通して、大切な施設とお客様をお預かりしています。改めて、自分たちは、ゲストにいい時間をご提供できているか、一つ一つ確認する必要があると思いました。日ごろの運営は、地道なことの積み重ねですが、積もり積もれば大きな違いになります。学びの多いひとときでした。