ジャーナリストの高野秀行氏が、日経ビジネスのオンライン版に、インタビュー形式で答えており、「辺境の地になった日本 生き残る道は世界の古都」というテーマでまとめられています。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00371/031000046/
まさにこれは、実感として感じる事です。
地方自治体で、カジノを作るとか、更にリゾートを作るとか、外資ホテルブランドを誘致して開発したいとか、色んな事を考えているようですが、はっきり言ってどれもズレてます。
はるばる日本に来る海外からの旅行者が求めているものは、まさに、古い都であり、一種の原風景です。
そもそも世界中で、豊かな森林を持っているところはそう多くありません。特に、温帯で、かつ適度に人が入れる状態に整備されているところが、アジアにどれだけあるんだろう?と思ってしまいます。心安らぐ辺境の地を求めて、モンゴルやブータンに行ったことがありますが、そこは、ただ乾いて埃っぽい場所でした。お寺もザラザラしていて埃ぽく、かつあまり整理されていなくて、座禅を組むような気分にはなれませんでした。一方で、日本の山々は、そこに行き、空からさしてくる光を見るだけで、神様がいることを信じられる気持ちになります。お寺も地元の方に整備され、清らかで平和です。手作りの服を着たお地蔵さんを見ると、本当に安らかな気持ちになります。来日したことのある友人が、私に語った日本の良さとは、こういう事でした。
グローバルな流れに取り残された感がある、日本の無邪気さは、ある意味魅力的に映ります。この魅力を自覚し、保全し、適切にアクセスしやすくすれば、地方に収益をもたらすことができます。問題は、地方、とくに自治体や観光協会にそのセンスが無いことなんだけど。行く先々に神様の住むところが設けられ、自発的に清掃したり、供物を捧げたり、お祭りをする風習が残っている場所なんて、本当に日本だけです。この素晴らしさに、早く気づいてほしい。
一方、問題もあります。この記事にもあるように、どうしようもない取り残され感は、アダルトコンテンツです。田舎だけではなく、都会のそれなりにホテルでも、アダルトコンテンツが野放しですし、性風俗もどきの客室マッサージは相変わらず健在です。
ここ10年、このサービスの撲滅に向けて活動していますが、”顧客のニーズにこたえている”というのがホテル業界の見解で、国もこれに対して動く気配はありません。この顧客ニーズが曲者で、日本のセクハラオヤジ向けのニーズからスタートしたものが、中国から来た同類オヤジニーズに発展し、”日本ではこんな素敵なサービスが受けられる”とネットで拡散されています。そういう国だと見られているということです。
数年前に、某温泉地で耳にした話です。温泉旅館に、海外からの大切な客人を宿泊させたところ、翌日ご機嫌が悪い。何かあったのかと聞いたところ、手配した客室マッサージの女性から、ある事を持ちかけられた、という事件が発生。招いた側は、疲れを取って欲しいと手配したマッサージだったものの、”私をそういう人間だと思っていたのか!?”と激怒されて、本当に困った、というのです。私がスパの仕事をしていると知り、”どうやって見分ければ良いのか?”と真顔で相談されました。グレードや運営会社で考えたらどうでしょう?と提案したところ、この旅館、一泊二食8万円で、某大手企業系だったそうです。
このガラパゴスぶりは、これから本格的にインバウンドが復活したとき、日本に向けての蔑視に繋がることは明らかです。コンプライアンスとかいう問題以前に、国としての誇りの問題です。
国のイメージやブランドは、有事の際に武力以上の力を持ちます。
日本に、”世界が失いたくないものがある”とどれほど認識してもらえるかが、まさにニッポンの生きる道なんだと思います。