新年あけましておめでとうございます。東京のお正月は、晴天続きで、とても穏やかな年明けです。
昨年は、長年の悲願であった、国産の精油を使用したホテルアメニティを発売しました。何度も諦めかけたプロジェクトでしたが、瀬戸内地域の2つのホテル、グランドプリンスホテル広島と、瀬戸内リトリート青凪の皆様のお力添えをいただき、ようやく実現しました。商品化にあたり、学び直すことも多くあり、これからを考える上で、大きな実りのあった年でした。
もともと、スパでゲストに満足していただくことが最優先だと考えているので、精油の産地にこだわっていたわけではありませんでした。国産精油というより、顔の見える作り手から入手したいと思ったきっかけは、人権団体に関わっている知人の一言にありました。友人同士の集まりで、スパプロダクトや精油のことを話していたら、意識が低い、と指摘を受けたのです。アロマテラピー好きの人は、それがどんな労働搾取で作られたものかも、環境を破壊しているかも考えない、それって本当にセラピーと言えるの?そんなことも考えず、”私アロマが好きなの~”と言っている人っておバカちゃんにしか見えないのよね、とかなり厳しい言葉。一瞬にして場が凍りついてしまいました。
気まずい雰囲気になり、自然解散になったので、後日こちらからコンタクトを取り、話を聞かせてもらうことにしました。バラ園で移民の子供たちが長時間働かされている写真を見せてくれ、ローズウッドやサンダルウッドは、ほぼ絶滅状態にあること、それで、生態系が本来の状態にないこと、ユーカリを植えたら在来種に影響を及ぼしていることなど、驚きの連続でした。香水用の需要が多いのも確かですが、近年の需要増は、日本の精油輸入量の急増にあるとの指摘も受けました。(全てのローズオイルが、劣悪な環境で採取されているわけではありません。念のため)
その話を聞き、まずは、顔の見える作り手から買いたい。でも、国産が無い以上無理かも・・と半ば諦めていました。が、商品づくりをサポートしてくださっていた専門家に相談すると、”少量ならあると思う”との話になりました。そこから、ALL THAT SPAに国産精油を取り入れる試みが始まりました。協力してくださった農家や精油工場に足を運び、蒸留工程を見学させてもらい、いかに精油が凝縮されたものか、なぜ希釈が必要か、ようやく理解できるようになりました。
品質の高さも、実はかなりの種類の精油が日本で採れることも理解できるようになりました。一方で、コストの高さや収量の不安定さに悩まされたのも事実です。検査証を出す工場ばかりではないので、製造段階になって、製造工場からはじかれることもありました。その場合は、別の蒸留工場を探したり、ブレンドを変えたり。
原材料が無いわけではないのに、何故こんなに生産が安定しないのか?と疑問を持つようになりました。色々調べていくと、要は需要が安定しないから、という現状が見えてきました。その需要安定の一歩が、今回のホテルアメニティの開発です。客室に滞在するゲストの数は、スパでトリートメントを受けるゲスト数よりはるかに多く、使用機会が大きく広がります。とはいえ、ホテルアメニティを自然素材で作り、精油のみで香りを構成することは、かなり難しいことでした。多くのゲストが使用される以上、洗浄力と仕上がり感は何よりも優先されます。自然素材重視の商品にありがちな、キシキシした感じを、改良するには、何度も試作を繰り返し、かつ、コストアップになる素材の量とコストの調整をする日々が続きました。
思わぬ効果もありました。使った方から、”頭皮の痒みが収まった”との声が寄せられるようになりました。どうも、ローズマリーの抗炎症効果が出ているようなのです。やっぱり精油の力は大したものです。
瀬戸内レモンを配合したバージョンが好評で、導入して下さる施設が増えたため、500mlのボトルサイズ(温浴で使う)ものも作ることになりました。加えて、今年は、別のエリアの別の産物を使ったアメニティも導入します。
そしてもちろん、トリートメント用の粧材にも、国産精油をもっと使っていきます。
スタッフと相談して、ホリスティックケアのこと、日本の精油の価値や、使う意味を、もっとチームで共有することにしました。このお正月は、せっせと資料作りにいそしんでいます。私のオタク心で始めたことですが、こうやって理解してくれる仲間や、応援してくれるビジネスパートナーに恵まれていることは、本当に幸せなことだと感じています。
昨年踏み出した一歩が、一つの場(アリーナ)を作れるといいな、と思っています。今年も宜しくお願いします!