このブログでも何度か投稿していますが、ここ数年、お茶のお稽古に通っています。”道”がつく稽古事は、そう簡単に手を出してはいけないという気持ちが強く、お稽古の場に選んだのは、一種のカルチャー教室でした。今更お免状を取りたいわけでもないので、気持ちの負担無く、細々と続けてられて、少し和文化に触れられればいい、という割り切りだったのですが、そのコースは、半年しかなく、上級コースは無いということでした。
カルチャーと弟子入りは、ほぼ別物なので、継続は無理、と思っていたのですが、同期の方々はやる気満々で、引きずられる形で入門することになりました。ほぼ予想した通り、半年もたつと、同期は次々に退会し、正直あまり乗り気でなかった(というか、続ける自身が無かった)私がポツンと残される状況になりましたが。が、まあこれもきっかけだと思い、続けてみることにしました。お茶を学ぶというより、誰かから学ぶ事が必要だな、と感じていたからです。
年齢を重ねると、注意してくれる人が少なくなります。年齢もあるし、自分の気持ちが固くなっていく、という面もあると思います。会社をやっている以上、スタッフとの立場は、ある意味私の方が強くなるので、言われる立場の気持ちや、どんな雰囲気のチームなら、皆が気持ちよく集えるか、といったことを、会社とは別の場で感じるのもいいかな、と考えました。
お茶の世界では、社中(先生が率いる組織)が一つの単位になっていて、同じ流派でも、先生によってかなり考え方が異なるようです。お稽古に何を着るか、から違います。洋服でOKのところもあれば、着物マストのところもあり、同じ着物でも、先生により細かな注意があるところと無いところもあります。なので、呉服屋さんに行くと、”先生のお考えを確認してきてください”と必ず言われます。お茶会に行く社中・行かない社中、茶事をやる社中、やらない社中など。
お茶をやっている方で、学生時代から一人の先生、という方も珍しくありませんが、私の場合、色んな理由で中断したり、再開したりしている事情もあり、今の社中が3つ目です。1つ目の社中では、洋服オンリー(私の場合)だったので、お免状はどんどん進みましたが、実は茶会に行ったことがありませんでした。私が着物を着る習慣が無かったので、先生も遠慮なさったのでしょう。2つ目の社中では、着物を着ることを心掛け、とにかくお茶会はたくさん行きました。が、お稽古はなかなか進みませんでした。3つ目の社中の今、入会した直後に足首骨折に合い、ずっとお休み(号泣)し、ようやく最近また再開したので、これからのお稽古になります。
社中の雰囲気もやり方も、それぞれ違うのですが、その一例として、男性の立ち位置があります。
1つ目の社中は、男性のお弟子さんはゼロでした。どちらかと言えば、花嫁修業的な感じの強いところで、お稽古中もお見合い話や結婚の話、他のお稽古事の話が多かった気がします。先生ご自身もかなりお仲人をなさっているようで、お世話好きの優しい方でした。美味しい和菓子と抹茶を楽しみ、お見合いの時に出すプロフィール用に、お免状(正確には許状)はたくさん取りましょう、という感じでした。なので、私も許状は色々取りました。実は中身は良くわかってないけど。
2つ目の社中は、働いている方が多く、男性のお弟子さんもかなりいました。ただ、同じ弟子でも男女差は随分あり、女性のお弟子さんが男性のお弟子さんのお世話をする、という印象が強い社中でした。お掃除や茶事の料理準備でも、当番制という訳ではなく、先生からのご指名で事が進みます。私は毎回庭掃除から道具の拭き上げまでやっていたので、お稽古に行くとほぼ半日かかります。茶事の場合は、前日の買い出しから始まるので、丸2日。一方、男性のお弟子さんの場合、”仕事が忙しくて”で、2~30分やってきては、すぐにお稽古してすぐにいなくなる・・。それでも茶会になると、男性がお点前して女性は水屋仕事。茶事も、”男性には料理は出来ない”との先生のお考えで、男性陣は食べるだけ。となると、さすがに弟子同士でのギクシャクはあります。お免状も、なぜか男性優先。女性は水屋仕事に従事、男性は上のお点前集中指導となると、それは差がついて当然かな、と感じることは多々ありました。女性の弟子に求められることが多い社中だったので、仕事や介護でお稽古の優先順位が下がると、続けにくい雰囲気があり、素敵な先輩がどんどん辞めていくのは寂しいことでした。でも、これってある意味日本の縮図・・。
3つ目の社中は、男性の生徒さんもかなりおられるのですが、無茶苦茶テキパキ。とにかく動きが凄い!それを見ていて、新たに入門してきた男性の新弟子さんもすぐに動きます。私が入会した際、水屋での動き方がわからずにウロウロしていたら、1年前に入ったという男性のお弟子さんが、全て教えてくれました。これはとっても新鮮でした!男女差が無いって、こういう事なんだろうな、と目から鱗でした。そんな稽古場ですが、私自身反省したことがあります。私の後に、新しいお弟子さんが入ってきた際、細かな諸々を、女性には教える、でも、男性に対しては、自分でやってしまっていたのです。無意識だったのですが、それを見ていた先生に、”梶川さん、自分でやるのではなく、**さんが自分でやれるようにに教えてね。”と言われて、はっと気づきました。
もともと男性のものだった茶道でも、時間を経て掟が変わっているように、世の中の掟も、意識と時間で随分変わるものなんだと思います。女性がやるもの、という雰囲気を女性自身が作っている面もあると思います。あと、”カッコいい”男性の姿が、いい形で継承される事が大事なんだろうな、とも感じた次第。
茶室の凛々しい男性の姿はとても素敵です。釜を持つ姿、茶を点てる姿、それぞれに美しいのですが、私が一番凄いなー、と思うのは、炭を入れてささっと直す姿です。(自分が苦手だから尚更)そして、炭を直せる人は、水屋仕事も無茶苦茶手際がいい。こういう姿がカッコいい!と継承されていけば、イケてる男子の定義も変わるように思います。
お稽古は本当に進まない私ですが、気づきは日々たくさん。一期一会、一座建立の気持ちで、いずれはスパで、私自身も抹茶も出したい。