本の話が続きます。
先日、ダイヤモンド社からこの本が出版されました。文芸春秋から出版されていた本の復刊になります。経営者の間で、”あのバカ”は以前から話題になっていました。
社名を”ANOBAKA"にしてしまったVC
https://diamond.jp/articles/-/334318
復刻に向けての記事
https://news.nicovideo.jp/watch/nw14878662
この本の著者の岡本さんは、経済紙のプレジデントの記者をしていた方で、在籍当時に知り合いました。洞察力のある企業の記事を書く方でしたが、ある日、”ベンチャーの取材をしたい”と相談され、知人を何人か紹介しました。献本を送っていただいた記憶があります。(執筆中のゲラもあったかも)もともとの本自体は、これからネット起業した経営者が日本を変えていくのではないか?との期待感を込めて書かれていました。
が、そのあと、ネットバブルがはじけ、時代の寵児となった経営者たちがスキャンダルに巻き込まれる事例が続きました。そこから20年以上たち、生き残った会社が楽天であり、DeNAであり、サイバーエージェントです。こういう時代を経て生まれた会社なんだと若い世代の方にも、是非読んで欲しいと思いました。
日本にはバブル期の時代があり、ネットバブルがあり、そこからの低迷があり、数十年ぶりに、起業の雰囲気が出てきています。国も起業を支援する動きが出てきており、この本のタイトルにもなっているスタートアップという言葉が特別な経済用語ではなくなってきました。変わらないと思われていた日本の社会も、気づけばかなり変わってきています。
さて、この本で描かれている時代、このネットの熱狂に、なぜか私も巻き込まれていました。ある会社を辞めて、ブラブラしていた時に、ホームパーティーで会った後輩に、“ヒマなの”と話したところ、”え~っじゃあ、無茶苦茶面白い案件があるから手伝ってくださいよ~”と軽いノリで誘われたのが、今で言う外資の投資ファンドでした。これもまた、今では存在感を増していますが、当時は何者?という感じでした。どうも、リスクがあるから会社に在籍している人には声をかけにくかったみたいです。私自身も他の仕事を探すまでのお手伝いで、最初はアルバイトみたいな感じで事務所に顔を出していました。が、怒涛の展開になり、日々投資案件を判断し、投資マネーを求める人と面談し、そのあと急遽シリコンバレーに行き、帰国する時はフルタイムのCOOになっており、という感じでした。目まぐるしく過ぎた数年間でしたが、当時このあたりにいた人には、そのジェットコースターぶりは普通のことだったと思います。
来るのが早いお金は、去るのも早い。あぶくは消えるのも早い。当時、日本に来るはずだったお金の多くは、米国に戻るか中国に行先を変えるかしました。それだけ投資先として魅力が無かったのです。私が関わっていたファンドも撤退を決めたので、撤収業務が大変でした。激やせしてしまい、会う人皆に、心配されていました。
あれだけ面白かったことも、あれだけ大変だったことも、人生にはそう無いと思います。面白い人たちにもたくさん会いました。良い面も悪い面も、短期間に多くの学びがあったと感じています。
という訳で、改めてこの本を読むと、個人的にはかなりほろ苦い。多分、あの当時、投資とかネットとかとは距離を置きたくて、献本も捨ててしまったのかもしれません。
今の日本の状況を見ると、海外から評価され、投資マネーを集めているのは観光の分野です。観光といっても、日本のプレーヤーに投資をするのではなく、土地そのものです。そこに海外のノウハウで付加価値を付け、国際的な顧客ネットワークでゲストを連れてきて投資効率を上げています。彼らの着眼点は、日本の歴史や風土、食にあり、残念ながらテック系への興味はほとんどありません。若い経営者たちは、この事実をどう考えていくのか、興味深いところです。
ちょうどこの本を読んでいる最中に、宮崎のシーガイアが、セガサミーからフォートレスに売却されるニュースが公式に発表されました。企業もサービスも、そしてもちろん人も、選ばれるものであれば存続できます。それを実感する週末になりました。